革命のインテリジェンス: ソ連の対外政治工作としての「影響力」工作 ソ連の出先機関だった日本社会党(現・民進党)

書評『革命のインテリジェンス』佐々木太郎著

~ソ連出先機関だった日本社会党(現・民進党)~

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ソ連による対米、対日、対欧浸透工作の実態を暴く一冊

本書は “影響力”のある個人を使って標的国の世論や政策を秘密裡に誘導する政治工作、すなわち「影響力」工作を、ソ連戦間期から1940年代半ばにかけて世界各地で展開していた“事実”を明らかにするというもので、ソ連の影響力工作、間接侵略工作の実態、代表的なところでは、「米国政府中枢にいかに入り込んでいたのか」や「日本の政治の中枢にいかに入り込んでいたか」という実態が描かれている。
 
■アメリカにも共産党が存在した?!
実は”資本主義”、”自由の国”の象徴ともいえるアメリカにも「アメリカ共産党」という共産主義政党が存在しているということはあまり知られていないのではないだろうか。
私もアメリカ共産党の存在は「ヴェノナ」(ジョン・アール・ヘインズ著、中西輝政編訳。絶版)や「コミンテルンルーズヴェルトの時限爆弾」(江崎道朗著)を読むまで全く知らなかった。
たしかに今では”非合法化”され実態としては無いに等しいようだが、戦前~冷戦初期の頃、アメリカにおいて”赤狩り=レッドバージ”が行われるまでは一定以上の勢力を誇っていたようだ。
 
本書「革命のインテリジェンス」では世界最大の資本主義国であるアメリカに対して、そのアメリカ共産党を通じて、あるいはそれ以外のルートを通じてソ連の情報機関による「影響力」工作がいつ頃から着手されるようになったのか、その起源について明らかにしている。
 
ある人物はソ連の支援によって政治家を目指し、
ある人物はアメリカ共産党員であることを伏せてジャーナリストとして言論活動を行い、アメリカ国内の有名政治新聞で副編集長まで上り詰める。
ある人物はアメリカ政府高官でありながら、アメリカの国策にかかわる機密情報を非合法に提供し、ソ連に有利になるように誘導する。
ある人物は原爆の開発メンバーでありながら、その開発資料をソ連に提供し、ソ連の核開発、開発に要するコスト、開発期間を劇的に改善させる。

ソ連あるいは共産主義の浸透工作の凄まじさが改めて浮き彫りになっている。
 
■日本における影響力工作
アメリカに対するそれと同じように、日本に対する影響力工作もすさまじい。
本書によると与野党、マスコミ、公安関係者とありとあらゆるところに、その「影響力工作」は及んでおり、具体的な事例として本書では以下の事例が取り上げられている。
 
自民党の代議士
・“周恩来の遺書“という偽文書をコラムにのせた大手新聞社の編集局次長 山本卓二※朝日新聞ではない。
日本社会党の幹部たち
・公安関係者
 
1975年~79年まで東京のKGB駐在部に勤務して対日工作にあたり、その後アメリカに亡命したスタニスラフ・レフチェンコによる米国連邦議会下院情報特別会聴聞会における、日本における自身の活動についての証言、“レフチェンコ証言”によると
KGBは1970年代において、日本社会党の政治方針を効果的にコントロールできていた。同党の幹部のうち10人以上を影響力行使者としてリクルートしていた」
とされている。
 
日本における共産主義の政党といえば、まずは「日本共産党」の名が挙がるだろうが、日本共産党は「中国の出先機関」であり、ソ連の日本における出先機関は「日本社会党」であった--。
それどころか、与党幹部にも、マスコミにも、公安当局にすら“エージェント”が入り込んでいた事実を本書は、元KGB諜報官であるレフチェンコ氏の証言やビットマン氏らの証言、それを裏付ける根拠資料と共に見事に暴き出している。
もちろん、個々の事例に関しては専門家の間では既に既成の事実であったのかもしれないが、それでも本書のような形でまとまった形でソ連の浸透工作をしると改めて浸透工作の凄まじさに、そして、その「日本社会党」の生き残りが、現「民進党」の幹部らであり、いまだ日本の政治の中枢に深く関与していることを思うと戦慄を覚える。 

憲政史家の倉山満先生曰く「戦後の日本はアクター(当事者)ではなくシアター(舞台)に成り果ててしまった」そうだが、まさにアメリカ、ソ連共産党中国共産党が入り混じっての“代理戦争”が日本の政治を舞台に繰り広げられていたのかと思うと、「戦後の日本は平和だった」という認識すら崩れてしまうのではないか。
 
これがまだ“序の口”だということが本書の内容の濃密さを物語っている。
日本の政治史、国際政治に興味がある人にとっては必読の一冊。

 

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