書評『約束の大地 想いも言葉も持っている』 勇者からの48篇の贈り物 

『約束の大地 想いも言葉も持っている/みぞろぎ梨穂/青林堂』 書評

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~~勇者からの48篇の贈り物~~ 『チャレンジド』とは「障がいを持って生まれてきた勇者たち」のことです。梨穂さんはそんな勇者のひとりです。彼女は今回、素晴らしい贈り物を私たちに贈り届けてくれました。

 

■勇者からの48篇の贈り物
『チャレンジド』とは「障がいを持って生まれてきた勇者たち」のことです。
みぞろぎ梨穂さんは、そんな勇者のひとりです。
梨穂さんは生まれてすぐ、黄疸で入院中に突如として脳に酸素がいかなくなるトラブルに遭遇しました。一命はとりとめたものの、脳に障害が残り、最重度の寝たきりの脳障がい児になってしまったのだそうです。
 
身体を動かすことも、しゃべることもできない梨穂さんでしたが、長年障がい者の教育について研究されてきた柴田保之先生と出会うことで彼女の人生は一変します。
 
現在においても医療や福祉、教育の世界では梨穂さんのような人は「言葉を持つ以前の発達段階にある」とされ、「言葉を持たない」というのが常識とされていたそうです。
ですが、言葉を持たないとされる子供たちとの触れ合いの中で「障がいが重いと言われていてもこの子には言葉があるだろう」と実感させられる少年との出会いを通じて柴田先生は障がい児から”言葉を引き出す方法”の開発に取り組み、障がいが重いとされ、言葉を持たないと言われていた子供たちから「言葉」を引き出すことに成功します。
 
そうした活動を続けていく中で、梨穂さんと出会い、梨穂さんから言葉を引き出してみたところ、”ごんごん”と言葉が溢れ出てきたのだそうです。
 
そして梨穂さんは深い深い思索とともに、一篇の詩を綴っていました。
この運命的な出会いがなければ、この世に生み出されることもなく、”はかなくしぼんで地上におち””たくさんの悲しみとなって朽ち果てていた”であろう、一編の詩がきっかけとなり、梨穂さんの創作活動が始まったのだそうです。
 
そして梨穂さんから湧き出た数々の詩を詩集として世に初めて出したのが2015年に発売された『らりるれろのまほう』であり、これに続く二冊目の詩集として、初めて全国出版されることになったのが本書『約束の大地』なのだそうです。
  
”私らしさを取りもどし ランプにあかりをまた灯そう”というフレーズが印象的な「涙のわけ」
 
”私の私らしさをなぬか(七日)のうちに 私は探さなければなりません”と、人生とは限りある時間のなかで精いっぱい生きることなのだと感じさせてくれる「留守番と外の世界」
 
”ランプをりりしく瑠璃色に 煉獄の底から櫓を漕ぎながらともして行こう”という非常に技巧的なフレーズから始まる「らりるれろの魔法」
 
”理がまさっては この世は情を失ってしまうだろう だけど理がなければ 情にすくわれてしまう”と物事の本質をついた言葉に息を呑んでしまう「みずからのみずからしさ」
 
命を繋ぎとめるはずの医療が、文明が、むしろ生まれてくる命に線引きをしようとしていることへの疑義を声を大にして叫び、
”命はみな平等だという言葉をなぜたやすく手放そうとするのか”
”なぜ万歳と命の誕生を喜べないのか”
という本質的な問いを私たちに投げかける「文明の狂気」
 
一人一人に生きる意味がある。そう思えることこそが、自分らしさを見つける旅の最初の一歩なのだという力強いメッセージを備えた「私の生きる意味」
 
理想や夢に向かって前進していくには、”ぶかぶかになった昔の服””ぬいぐるみの殻”を破って本当の自分をさらしてでも進んでいかなければならない。でもそれが自分に与えられた使命なのだという強い決意を高らかに宣言する「約束の大地」
  
”さあ外の世界に旅立とう 絶望を探す旅へ”という言葉に梨穂さんの詩の本質が見える気がする「ついに留守番が終わるのだ」
 
16年7月に相模原で起きた惨劇のことに触れた、饒舌に尽くしがたい三部作「やまゆりの涙」「やまゆりよ永遠に咲け」「夢を夢に終わらせないために」
   
ここに納められている詩は本当に魂を揺さぶるものばかりです。
 
ともすれば私たちは誰かを傷つけてでも、自らの欲望を優先させ、すぐに現状に流され、日々を怠惰に過ごし、ただただ周囲への呪いの言葉を吐くだけの、自分勝手無責任な存在なのかもしれません。
 
その一方で、あきらめない心慈愛と思いやり心、現状に流されず一歩を踏み出す勇気を秘めているのもまた、私たち人間なのだということを梨穂さんは私たちに教えてくれます。
 
たとえどんなに困難な立場、逆境にあったとしても、それにくじけず、瑠璃色のランプをりりしくかかげ、謙虚さをもちながらも理想をあきらめず、慈愛と思いやりといった慈しみの心を携えながら、ぬいぐるみの殻を破って明日への一歩を踏み出す-。
 
私たちひとりひとりにそんな素晴らしい力が備わっているのだということを語りかけてくれているかのようです。
  
また本書後半に収録されている梨穂さんへのインタビューやコミュニケーションに困難を抱える人達自身の会である「きんこんの会」で語られていることは、梨穂さんのような勇者は他にもたくさんいるということです。
 
また梨穂さんのお母様もブログをされており、梨穂さんの日々の様子を発信されることに努力されているそうです。
ブログ「らりるれろのきぼう」http://ameblo.jp/0915kibou/
 
勇者たちからの贈りものがひとりでも多くのひとのもとへ届くことを願わずにはいられません。
 
おススメです!

 

約束の大地 想いも言葉も持っている   みぞろぎ梨穂

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