書評『現代アメリカ保守主義運動小史』~日本が知らない戦後アメリカの保守派の苦闘の歴史~

「日本が知らない戦後アメリカの保守派の苦闘の歴史」

 

日本に紹介されているのはリベラルのアメリカ戦後史だけ。日本でいうならば戦後政治史を共産党社会党の視点だけで紹介しているようなものだ-江崎道朗

   

ある意味で別書評を書いた「革命のインテリジェンス」と対を成す一冊。
「革命のインテリジェンス」ではアメリカにも”アメリカ共産党“が存在したことに触れた。
(「革命のインテリジェンス」に関する書評はこちら→http://bit.ly/2byMjnQ

そして本書では、日本が知らない、戦後アメリカの保守派の苦闘の歴史が書かれている。
 
本書は、米シンクタンクヘリテージ財団専任特別研究員のリー・エドワーズ氏の著書を翻訳したもの。
訳者の渡邉稔氏と共に中心メンバーとなって邦訳にあたった編著者の江崎道朗先生は、様々なコラムや講演会などで精力的に活動されている評論家であり、最近では、憲政史家の倉山満先生が主催する話題のネットチャンネル「チャンネルくらら」にもレギュラー出演されている。
江崎先生曰く
「日本に紹介されているのはリベラルのアメリカ戦後史だけ。日本でいうならば日本の戦後政治史を共産党社会党の視点だけで紹介しているようなもの」
であり、本書も世界中で翻訳され、中国ですら出版されていたにも関わらず、日本では全く邦訳されていなかったそう。
それを憂いた江崎先生が仲間と共に翻訳し出版に漕ぎつけたのが本書である。
 
■知られざるアメリカの実態 アメリカを牛耳る「ニューディール連合」と、それに対抗する「アメリカ保守」

 
本書でいう”リベラル“とは端的にいうとフランクリン・ルーズヴェルト大統領時代の、ニューディール政策が行われた頃にその基盤を拡大させた労組・知識人・マスコミからなる一大勢力、”ニューディール連合“のことを指す。 
この“ニューディール連合”こそ、ソ連のスパイ、共産主義組織コミンテルンによる間接侵略工作を最も受けた勢力であり、GHQの生みの親であり、いまなおマスコミを牛耳っており隠然たる影響力を持つと言われている。
(CNNなどは米国保守界隈では“CNN=コミュニスト共産主義者)・ネットワーク・ニュース”、日本でいえば “赤旗”と揶揄されているそう。)
 
そのニューディール連合への反発から始まり、「建国の理念」や「古典的リベラリズムリバタリアン)」を重視して展開されたのが“アメリカの保守主義運動”だとされている。
 
■リベラルとは形を変えた「共産主義者

本書では、日本には伝わることがなかった、戦後アメリカの保守派の苦闘の歴史が書き記されている。アメリカの保守派は負け続けており、その中には保守派自身の戦略ミス、消極的態度に起因する自滅なども含まれている。
とはいえ、自称“リベラル派”知識人による悪辣なレッテル張りもそれ以上にひどいというのがよくわかる。
 
リベラル派から言わせると、
伝統を重んじようという保守派の運動は、「いらついた精神のジェスチャー」であり、
共和党への投票は「ファシズムへの投票」であり、
共和党の大統領候補者は「精神的に不安定」で「内心は大量殺戮者」だそうだ。
 
リベラル派と言えば“自由”“平等”“博愛”をイメージするだろうが、これらの罵詈雑言はそのイメージからかけ離れているのではないだろうか。
アメリカの保守派が「アメリカのリベラル(ニューディール連合)は形を変えた共産主義者」と言いたくなる気持ちもよくわかる。
またアメリカで展開されたリベラル派による保守派への誹謗中傷と重なるように思えたのは、日本国内での反安倍陣営(民進党共産党などの野党、朝日新聞などのマスコミ、その他市民団体)によって展開された「アベ政治を許さない」というフレーズや、「安倍はヒトラーだ」、「安倍は歴史修正主義者」という喧伝ではないだろうか。
 
彼らの主張だけを聞いていると「アメリカに追従したくない」という風に聞こえるが、その実、相対する陣営に対する印象操作という意味では“アメリカのリベラル派の手法”を取り入れているというのはどういうことだろうか?
 
やはり、アメリカのリベラルも、日本のリベラルも「形を変えた共産主義者だ」というところに落ち着くのかもしれない。

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