書評『約束の大地 想いも言葉も持っている』 勇者からの48篇の贈り物
『約束の大地 想いも言葉も持っている/みぞろぎ梨穂/青林堂』 書評
~~勇者からの48篇の贈り物~~ 『チャレンジド』とは「障がいを持って生まれてきた勇者たち」のことです。梨穂さんはそんな勇者のひとりです。彼女は今回、素晴らしい贈り物を私たちに贈り届けてくれました。
■勇者からの48篇の贈り物
『チャレンジド』とは「障がいを持って生まれてきた勇者たち」のことです。
みぞろぎ梨穂さんは、そんな勇者のひとりです。
梨穂さんは生まれてすぐ、黄疸で入院中に突如として脳に酸素がいかなくなるトラブルに遭遇しました。一命はとりとめたものの、脳に障害が残り、最重度の寝たきりの脳障がい児になってしまったのだそうです。
身体を動かすことも、しゃべることもできない梨穂さんでしたが、長年障がい者の教育について研究されてきた柴田保之先生と出会うことで彼女の人生は一変します。
現在においても医療や福祉、教育の世界では梨穂さんのような人は「言葉を持つ以前の発達段階にある」とされ、「言葉を持たない」というのが常識とされていたそうです。
ですが、言葉を持たないとされる子供たちとの触れ合いの中で「障がいが重いと言われていてもこの子には言葉があるだろう」と実感させられる少年との出会いを通じて柴田先生は障がい児から”言葉を引き出す方法”の開発に取り組み、障がいが重いとされ、言葉を持たないと言われていた子供たちから「言葉」を引き出すことに成功します。
そうした活動を続けていく中で、梨穂さんと出会い、梨穂さんから言葉を引き出してみたところ、”ごんごん”と言葉が溢れ出てきたのだそうです。
そして梨穂さんは深い深い思索とともに、一篇の詩を綴っていました。
この運命的な出会いがなければ、この世に生み出されることもなく、”はかなくしぼんで地上におち”、”たくさんの悲しみとなって朽ち果てていた”であろう、一編の詩がきっかけとなり、梨穂さんの創作活動が始まったのだそうです。
そして梨穂さんから湧き出た数々の詩を詩集として世に初めて出したのが2015年に発売された『らりるれろのまほう』であり、これに続く二冊目の詩集として、初めて全国出版されることになったのが本書『約束の大地』なのだそうです。
”私らしさを取りもどし ランプにあかりをまた灯そう”というフレーズが印象的な「涙のわけ」
”私の私らしさをなぬか(七日)のうちに 私は探さなければなりません”と、人生とは限りある時間のなかで精いっぱい生きることなのだと感じさせてくれる「留守番と外の世界」
”ランプをりりしく瑠璃色に 煉獄の底から櫓を漕ぎながらともして行こう”という非常に技巧的なフレーズから始まる「らりるれろの魔法」
”理がまさっては この世は情を失ってしまうだろう だけど理がなければ 情にすくわれてしまう”と物事の本質をついた言葉に息を呑んでしまう「みずからのみずからしさ」
命を繋ぎとめるはずの医療が、文明が、むしろ生まれてくる命に線引きをしようとしていることへの疑義を声を大にして叫び、
”命はみな平等だという言葉をなぜたやすく手放そうとするのか”、
”なぜ万歳と命の誕生を喜べないのか”
という本質的な問いを私たちに投げかける「文明の狂気」
一人一人に生きる意味がある。そう思えることこそが、自分らしさを見つける旅の最初の一歩なのだという力強いメッセージを備えた「私の生きる意味」
理想や夢に向かって前進していくには、”ぶかぶかになった昔の服”や”ぬいぐるみの殻”を破って本当の自分をさらしてでも進んでいかなければならない。でもそれが自分に与えられた使命なのだという強い決意を高らかに宣言する「約束の大地」
”さあ外の世界に旅立とう 絶望を探す旅へ”という言葉に梨穂さんの詩の本質が見える気がする「ついに留守番が終わるのだ」
16年7月に相模原で起きた惨劇のことに触れた、饒舌に尽くしがたい三部作「やまゆりの涙」、「やまゆりよ永遠に咲け」、「夢を夢に終わらせないために」
ここに納められている詩は本当に魂を揺さぶるものばかりです。
ともすれば私たちは誰かを傷つけてでも、自らの欲望を優先させ、すぐに現状に流され、日々を怠惰に過ごし、ただただ周囲への呪いの言葉を吐くだけの、自分勝手で無責任な存在なのかもしれません。
その一方で、あきらめない心、慈愛と思いやり心、現状に流されず一歩を踏み出す勇気を秘めているのもまた、私たち人間なのだということを梨穂さんは私たちに教えてくれます。
たとえどんなに困難な立場、逆境にあったとしても、それにくじけず、瑠璃色のランプをりりしくかかげ、謙虚さをもちながらも理想をあきらめず、慈愛と思いやりといった慈しみの心を携えながら、ぬいぐるみの殻を破って明日への一歩を踏み出す-。
私たちひとりひとりにそんな素晴らしい力が備わっているのだということを語りかけてくれているかのようです。
また本書後半に収録されている梨穂さんへのインタビューやコミュニケーションに困難を抱える人達自身の会である「きんこんの会」で語られていることは、梨穂さんのような勇者は他にもたくさんいるということです。
また梨穂さんのお母様もブログをされており、梨穂さんの日々の様子を発信されることに努力されているそうです。
ブログ「らりるれろのきぼう」http://ameblo.jp/0915kibou/
勇者たちからの贈りものがひとりでも多くのひとのもとへ届くことを願わずにはいられません。
おススメです!
約束の大地 想いも言葉も持っている みぞろぎ梨穂
『日本国憲法を改正できない8つの理由』書評 憲法改正論議とダメ虎~~なぜ日本国憲法を改正できないのか。~~ #倉山満
『日本国憲法を改正できない8つの理由』のレビュー
(Scorpionsさんの書評)
【本が好き!】
憲法改正論議とダメ虎
~~なぜ日本国憲法を改正できないのか。~~
答:改憲派も護憲派も「言葉遊び」に終始して、じゃれ合っているから。
■なぜ日本国憲法を改正できないのか
なぜ日本国憲法を改正できないのか-。
答えは「キュー〇ー3分クッキング」並みにカンタンです。
改憲派も護憲派も「言葉遊び」に終始してじゃれ合っているからです。
だって、誤植の一文字すら変えられないのですから。(憲法第7条4号)
これを「言葉遊び」、「じゃれ合っている」と言わずして何というのでしょうか?
著者は35万部を超えるベストセラー『嘘だらけシリーズ』でおなじみの倉山満先生。
倉山先生の著書は『嘘だらけ』シリーズをはじめ、『保守の心得』、『政争家・三木武夫』、『歴史問題は解決しない』、『太平記の時代』、『増税と政局』、『帝国憲法物語』などなど数えきれないくらい読ませて頂いてきました。
「誰でも坂本龍馬になれる」
「微力は無力ではない」
「どうなるか?ではなく、どうするか!を考えよ。」
などの倉山先生の言葉は実生活においても活かすことができる大事な心構えを教えてくれるものだと思います。
本書『日本国憲法を改正できない8つの理由』は平成25年に出版された『間違いだらけの憲法改正論議』を文庫化したものですが、平成25年当時の議論の様子とそれから4年近く経過した現在とを見比べても「一ミリも状況が変わっていない」という現実に驚かされます。
■まるで暗黒時代の阪神タイガース
今回護憲派と改憲派の憲法論議を俯瞰してみて改めて感じたことは、「まるで90年代の、暗黒時代の阪神タイガースを見ているかのようだなぁ」というものでした。
阪神タイガースといえば、巨人に次ぐ人気球団であり、2005年以降優勝から遠ざかっているものの、近年はAクラスで安定推移しています。
ですが、90年代のタイガースといえば、ファンの間でも「暗黒時代」と言われているとおり、万年Bクラスどころか、常に最下位、運が良くて5位という、それはそれは悲惨な成績でした。
本来、「リーグ優勝」「日本一」を目指して戦うスポーツチームであるはずなのですから、ファンを含め選手や監督、現場スタッフ、それを支える球団フロント陣、全員が一丸となって「勝利」を目指すのが当然のはず。
ですが、皮肉なことに巨人に次ぐ観客動員数を誇る人気球団であり、「何もしなくても黒字になる」ことが悲劇の始まりでした。
■「ダメ虎でも黒字だから良い」 惰眠を貪る球団フロント・事務局=護憲派・財務官僚
当時、まことしやかに噂されていたのは「球団フロント陣は”優勝したい”なんて考えていない。むしろ”優勝しないでくれ”と考えている」というものでした。
なぜか-。
「優勝してしまうと優勝に見合った分だけ選手の年俸を上げなくてはならない。それでは収益が圧迫され、球団経営にとってはマイナスなのだ。優勝しない程度にそこそこの成績でいい。」というのです。
前述したように全員が一丸となって取り組まねば「勝利」などおぼつかないはずなのに、フロント陣にはそのような考え方が蔓延していました。
ライバル球団がどれだけほくそ笑んだことか目に浮かぶようです。
これって、今の護憲派あるいは財務官僚の考え方そのものではないでしょうか?
本来、コスト(選手の年俸)が上がるというのであれば、売上を伸ばすあるいは利益率を改善させるなどの「企業努力」をしなければなりません。そのため取り組むべきことは評価制度の見直し、スカウト活動の強化、業務の効率化、グッズ販売の強化、ファンサービスの強化等々、山のようにあります。
ですが、「暗黒時代」の阪神フロント陣がこれらの企業努力に取り組んでいるという話は聞いた記憶がありませんでした。
これを今の憲法論議に置き換えると、今まで企業努力を怠ってきたことが白日の下に晒されたくない経営陣が「護憲派」、そして選手や安全対策を「コスト」としかみなさず、年俸を引き下げること、安全コスト、メンテナンスコストをいかに抑制するかということばかりを考えている事務局が「財務官僚」といえます。
■ガナリ立てるだけのトラキチ=改憲派
一方、タイガース愛を語るトラキチも悲惨でした。
借金が30あっても「30連勝すれば借金0や!」
連敗してても「10-0から5点差まで詰め寄った。5点取れる実力があるのだから、次に繋がる負けや!」
等々、目の前の出来事に一喜一憂する有り様でした。
私自身も熱心なタイガースファンだったので、開幕直前には、自分が監督になったつもりで開幕ベストオーダーを考え妄想したものです。
当時は新庄、亀山が中心選手で、妄想の中では彼ら以下、野手は全員3割、30本で投手は20勝が1人、10勝以上が5人以上と、年間100勝以上する計算になってましたがw
今の憲法論議に当てはめれば、3年連続最下位でロクに補強もしていないのに、監督が「今年は最下位脱出を目標にします」と言おうものなら。「なぜ『優勝』を目標にしないのか!」と憤慨しているトラキチが改憲派だと言えるのではないでしょうか。
■目指すべきはチームが強くなること
目標に『優勝』の二文字が入っていれば、優勝できるならこれほど簡単なことはありません。
本当に優勝して欲しいのであれば、「現実にチームが強くなること」、これ以外に選択肢は無いないはずです。
今思えば、阪神タイガースの暗黒時代も、90年代当時のまだまだプロ野球一強だった時代に、下部リーグが存在しないこと、すなわち「降格」というものがなく、最低でも6位でいることができたからこそ許されていた「甘えの構造」だったとも言えます。
もし当時のプロ野球にJリーグのようなJ2との入れ替え制が取られていたのだとしたら、「阪神タイガース」の名は”過去に1部リーグに在籍していた元・強豪チーム”となって本当に歴史の彼方に消えていたかもしれません。
現にJリーグではそのような状態になってしまった名門チームがいくつも存在しています。
おそらくこれらのサッカークラブの中に「ダメ虎」だったチームというのは殆ど無いのではないでしょうか。どのチームも必死にJ1生き残りをかけてチームを強くさせようと企業努力し、全員が一丸となって戦っていたはずです。
それでも「降格」してしまうのです。
一度J2に降格したチームがJ1に昇格するのがどれほど至難の道なのか、枚挙にいとまはありません。
「過去に1部リーグに在籍していた元・強豪チームになってしまうこと」、「2部に降格してしまうこと」を国で捉えたならば、「滅亡する」ということになるのではないでしょうか。
■半島有事の今だからこそ必要な、アベノミクスの再起動、消費税減税、異次元緩和
いままさに北朝鮮の核開発に端を発する「半島有事」が日に日に現実味を帯びてきており、緊迫してきています。
上述のたとえになぞらえるならば、ロクな補強も進まないうちに、開幕戦を迎えてしまったに等しいと言えます。
少なくとも万全の体制で開幕を迎えたと思っている人は少数派でしょう。
本来であれば、現在のような事態になることは十分予想されていたわけですから、もっと国民の生命・財産を守るための安全対策に力を入れておくべきだった面は否めません。
強いチームを作るためにはそれなりの時間が必要であるのと同様に、防衛力の増強も一朝一夕にできるものではありません。少なくとも数年単位の時間をかけて実施しなければならないものであることは自明です。
そんな状況下にあって、私たち日本というチームの一番の強みといえば、何でしょうか?
それは「経済力」です。
倉山満先生の別書『保守の心得』によれば、平成14年、小泉首相だけが拉致被害者を連れ帰ることができたのはなぜか。それは「景気が回復していたから」。これに尽きるというのです。
日本のような経済大国の景気が回復すれば潜在的な軍事力は拡大し、それだけで外交交渉の余地が広がります。
(略)
端的にいえば、北朝鮮は日本と戦争になれば滅ぼされると怯えたわけです。
北朝鮮は力の論理の信奉者です。自分より弱い相手は歯牙にもかけません。反対に、自分より強い相手とは絶対にケンカをしないのです。だから怯えたのです。
そこに日本が交渉する余地があったのです。
と『保守の心得』では指摘されています。
今となっては、平成14年と状況も違いますし、情勢の緊迫度も『保守の心得』が出版された2014年の頃と比較にならないほど高まっていることは確かです。
ですが、「経済成長こそが潜在的な軍事力の増強」という本質に変わりはないはずです。
現実の防衛力の増強が間に合っていない現状を鑑みた場合、最も短期間に、最も効果的な防衛力の増強とは「お金を刷って刷って刷りまくって、加熱しすぎるぐらい経済成長させること」に他ならないのではないでしょうか。
ならば、取るべき選択とは景気、経済成長にマイナスの効果しかもたらさない消費税を減税し、黒田バズーカを再びうち放つこと、即ち「アベノミクスを再起動させること」に尽きるのではないでしょうか。
最も短期間に最も高い効果を生み出し得る「アベノミクスの再起動」ですら、今ここに至っては遅きに失しているのかもしれません。ですが、「滅亡」という名の降格危機から逃れるためには手段を選んでる暇などないはずです。
■「滅亡」という名の降格危機から逃れるために
日本が「ダメ虎」であっても許された時代はとうの昔に過ぎ去りました。
そういった現在にあって、必要な議論とは言葉遊びでじゃれ合うことではありません。
ましてや「観客動員数は増えない(=経済成長はしない)」と決めつけ、「観客動員数が減って収益が減少するから、選手の年棒を抑えよう、安全対策(=防衛費)は雀の泪ほどにしよう、それでも自分たちの給料(=天下り先)は増やしたいから、チケット価格を吊り上げて(=増税)、収支を維持しよう(=健全財政)」などということではないはずです
「滅亡」という名の降格危機から逃れるためにあらゆる手段を講じること。
このための議論こそが求められているのではないでしょうか。
茨の時代に突入した「いま」だからこそ、憲法とは何か、憲法を論ずるとは何か、その本質を知らなければならないと改めて痛感させられました。
おススメです。
書評『古事記の宇宙』 古事記は日本最古のサイエンス・ブック?! 古事記がわかれば宇宙がわかる!!
古事記は日本最古のサイエンス・ブック?! 古事記がわかれば宇宙がわかる!!
■あらすじ
古事記といえば、日本書紀とともに編纂された「日本最古の歴史書」であり、神話の時代から推古天皇に至るまでの歴史が記されたものとされているのが通説ではないでしょうか。
ですが、実は古事記にはそれ以前のはるか昔、宇宙創成から続く宇宙史、人類史が記されていたとしたら-
そんな視点で古事記を読んでみるのも面白いと思いませんか?
著者は竹内睦泰先生。愛称”むっちゃん”。
元・代々木ゼミナール日本史の人気講師にして、古神道を現代に受け継ぐ第73世武内宿禰です。(ちなみに夢は「死んだら前方後円墳に入ること」だそう)
第73世武内宿禰として古神道の奥義を口伝にて継承するむっちゃん先生曰く「古事記には宇宙と自然の叡智が凝縮されている」のだそうです。
■宇宙創成の物語と暗黒物質”ダークマター”~超弦理論
むっちゃん先生曰く古事記(口伝では”ふることふみ”と呼ぶのだとか)は”暗号”によって書かれており、単に日本の過去の歴史を伝えるだけのものではなく、「宇宙史」をも含んでいるのだそうです。
『無』からはじまり、宇宙が創られ、地球が、世界が、日本が作られたということを描いていると。
正直、最初は「ほんとかよ」と思いましたがw、読み進めていくうちに、むっちゃん先生のいうところの宇宙創成の話と最新の宇宙科学の”共通するところが多い”ことに改めて驚かされます。
例えば、むっちゃん先生は古事記には”無の神”が存在するということが実にさりげなく、暗号のような形で記されていると指摘します。
この「無の神」こそ最新の宇宙科学で言われている「ダークマター(暗黒物質)」のことではないでしょうか。(注:コンビニで売られているチョコ菓子のことではありません!)
「ダークマター」は暗黒物質とも言われ、宇宙のエネルギーを構成する見えない物質の総称だとされています。
1933年に天文学者フリッツ・ツビッキーが、かみのけ座銀河団の個々の銀河の動きを観測し、目に見える物質の約400倍の隠れた質量がなければ銀河団はばらばらに飛散することを指摘し、また、70年代にはヴェラ・ラービンが、渦巻銀河の腕の回転速度と物質分布の矛盾を指摘したことから、その存在が示唆されていました。
もし目に見える物質質量の10倍の質量が存在しなければ、現在観測されているような腕の回転運動は維持されないということが分かったからです。
そんな中、高性能化したコンピュータ-を使ったシミュレーションも行われていくうちに、宇宙初期の銀河が形成される段階で、ダークマターを考慮しないシミュレーションでは銀河が形成されず、通常物質の約6倍のダークマターの重力を加えると銀河が形成されることが分かりました。
またSDSSなどの研究によって詳しい宇宙の大規模構造が明らかになってきましたが、これらを形成するシミュレーションでも同様にダークマターの存在が不可欠となっています。
(参考:『ここまで見えてきた宇宙の謎 ビジュアルでわかる宇宙御観測図鑑』)
他にも本書では『古事記』で記されている内容と最新宇宙科学理論であるインフレーション理論(超弦理論)との類似性やビックバン、DNAとの関わりのことなどが登場します。
■内八洲外八洲観とフラクタル理論
また神道には内八洲外八洲観(うちやしまそとやしま)という考え方があるそうです。
日本は世界の雛形であるという考え方で、地形はそのままにして世界の大陸を移動させれば縮小するば、日本列島と同じになるというのです。
ユーラシア大陸が本州、北アメリカ大陸が北海道、オーストラリア大陸は四国、そして九州はアフリカ大陸とそれぞれ酷似しているのだそうです。
この内八洲外八洲観という考え方も1975年にフランスの数学者・経済学者のブノワ・マンデルブロが提唱した「フラクタル理論」(自己相似)とそっくりです。
■本当は怖い浦島太郎伝説?!
上記の『古事記』にはいろいろな側面があるという意味においては、イザナギ・イザナミの話や天照大神と須佐之男命の話、八岐大蛇退治や因幡の白兎、海幸彦命・山幸彦命などの昔話もそうです。
これらの物語は『古事記』に登場するエピソードなのですが、それにも実は「暗号」が隠されていたというのです。
本書には登場しませんが、『古事記の宇宙』発売記念として特集が組まれていたネット放送のチャンネルくららの番組では、次のような回がありました。
【11月8日配信】竹内睦泰の古事記の宇宙「浦島太郎に隠された秘密!?」聞き手小野義典【チャンネルくらら】
【11月8日配信】竹内睦泰の古事記の宇宙「浦島太郎に隠された秘密!?」聞き手小野義典【チャンネルくらら】 - YouTube
浦島太郎といえば、「苛められた亀を助けたら竜宮城に招かれ、歓待を受けたあと故郷に戻ったら誰もいなくて、寂しさのあまり玉手箱を開けたら、おじいさんになってしまいました」というお話ですね。
それが実は・・・
この続きは是非動画を見て頂ければと思います。(ジ〇リ作品にも○○が登場?!)
■古事記は神道の本であり、歴史書であり、SF、科学、ミステリー、恋愛小説でもある。
今回本書でメインにしているのは『古事記』の中でも特に神代を描いた上つ巻です。
それが、中つ巻、下つ巻となるにしたがって歴史書の様相が色濃くなるのですが、今までご紹介したように上つ巻はSF小説か空想科学読本、あるいはミステリー、サスペンスといった趣です。
でもそれでいいのではないでしょうか。
むっちゃん先生も
古事記にはいろいろな側面があります。
神道の本、歴史書、あるいはSF、ミステリー、恋愛小説などなど。
どのようなアプローチでもいいのです。
要は『古事記』を知って、楽しんでもらえるきっかけになればよいのです。
山に登るルートがいろいろあるように、『古事記』への道もいろいろあるはずですから
と述べています。
今話題の地球科学といえば『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』でも取り上げられている『スノーボールアース』(全球凍結)ですが、もし、『スノーボールアース』のことも『古事記』に書かれていたと思ったら何だかワクワクしませんか?
『古事記』の新たな一面を知ることができたという面で非常に参考になりました。
おススメです!
『生きる意味って何だろう』 チャンネルくらら 特別番組『約束の大地 想いも言葉も持っている』#チャンネルくらら
『生きる意味って何だろう』
特別番組『約束の大地 想いも言葉も持っている』ゲスト:東京大学名誉教授 矢作直樹 倉山満【チャンネルくらら・4月9日配信】
@YouTubeさんから
生後1か月で病を患い、最重度の脳障がい児になってしまったみそろぎ梨穂さん。
そんなみそろぎさんが書いた詩集『約束の大地 想いも言葉も持っている』
『生きる意味って何だろう』
非常に重たいテーマです。
五体満足に生まれてくる人もいれば、みそろぎ梨穂さんのように生後1か月で大病を患い、最重度の脳障がい児になってしまう人もいる。
他にも交通事故に遭ってしまう人や事件に巻き込まれる人
天災に巻き込まれる人、病に倒れてしまう人
拉致されてしまう人
もし自分が同じ立場になったならと思うこともありますが、どれほどの苦痛が横たわっているのか想像もつきません。
自分にできることがあるとすれば、他人の痛みを少しでも分かろうと努力することぐらいでしょうか。
それすら本当にできるかどうか自信はありませんが、それでも他者に対する最大限のリスペクトだけは持ち続けたいと思います。
それができない人間にはなりたくないですね。
トランプ政権の意思決定プロセスと戦時内閣と日本 #シリア空爆 #北朝鮮問題
トランプ政権がシリアのアサド政権を空爆しました。
アサド政権が使用したとみられる化学兵器に対する人道的見地からの制裁の意味が強いと報じられています。
これに対してアサド政権を支援する側に立っているロシアは非難声明を出していますが、実際のところはどのように分析しているのでしょうか。
ロシア発の情報サイトとして継続してウォッチしているロシアNOWは次のように分析しています。
今回の空軍基地への攻撃は、トランプ大統領が感情に流されて行ったものだと述べる専門家もいるが、まさかそんなことはあるまい。攻撃の日時があまりにも巧妙に選ばれているし、ロシアと直接の衝突が生じる可能性も最小化されているからだ。例えば、ロシア軍は攻撃についての予告を受けており、それによって同盟国シリアの軍隊も、予め軍事施設の避難を始めていたので、実質的な損害は避けられた。
ロシアNOWの分析を信用するのであれば、今回のシリア空爆は計算され尽くしたうえで実行されたものと相手側にも受け止められているようです。
正直なところを言えば、今回のシリア空爆の持つ意味や今月中にも起きるのではないかと懸念されている朝鮮半島有事について、どのような心構えでいればいいのか、日本として何を、どこまですることができるのか、すべきなのか、わかりません。
ですが、事実として一つ言えることがあるとすれば、トランプ政権は「戦時内閣」の様相を呈してきているのではないかということは言えるのではないでしょうか。
■ベトナム戦争の反省
なぜそのように感じたのか。
それは時期を同じくして読んでいた奥山真司さん訳の『クラウゼヴィッツの「正しい読み方」』
にベトナム戦争に関する論考が掲載されていたからです。
それはハリー・サマーズ氏によるベトナム戦争に対する論考で、ハマーズ氏によれば、ベトナム戦争の失敗の原因の一端に指揮系統が統一されていなかったこと、すなわち
「ベトナム戦争中の歴代政権たちは自らを戦時内閣とはせずに、平時の意思決定プロセスをそのまま維持していたことが挙げられる」との指摘があったのです。
上述したように、今回のトランプ政権によるシリア空爆が果たして効果があったのか、なかったのか、それとも逆効果だったのか、さらに言えば北朝鮮や中国・ロシアに対してどのような影響を及ぼすのか私には見当もつきません。
■もしトランプ大統領に「共に立ち向かおう」と手を差し伸べられたなら-
それでもその意思決定のスピードという意味においては「戦時内閣並みであった」と言えるのではないでしょうか。
トランプ氏が大統領になる前に出版された江崎道朗先生の著書『マスコミが報じないトランプ台頭の秘密』 の書評を書いたときに、次のようなことを書いてみました。
もしトランプ大統領に「共に立ち向かおう」と手を差し伸べられたなら-
“差し出されたその手を力強く握り返すことのできる手”を日本は持っているのでしょうか?
もしトランプ大統領に「共に立ち向かおう」と手を差し伸べられたなら―
「おカネ(予算)がありません」と拒否するのでしょうか?
もしトランプ大統領に「共に立ち向かおう」と手を差し伸べられたなら―
それとも、「F・ルーズヴェルト政権下のニューディーラー達(=GHQ)が制定した“日本国憲法”で制約されているので共闘できません」と拒否するのでしょうか?
いつも楽しみに視聴しているチャンネルくららの緊急特番番組では、細川内閣を例に出し、「シリア空爆は自分の問題」との言葉で締めくくられていました。
楽しく学ぼう!シリア現代史特別編:「シリア空爆を語る!」【チャンネルくらら・4月7日配信】
「もしトランプ大統領に「共に立ち向かおう」と手を差し伸べられたなら-」
この問いに対して日本はどのように答えるのでしょうか。
「平時の意思決定プロセスの積み重ね」という選択で対応しようとでもいうのでしょうか。
今まさにこれらの問いに日本はどのように答えるべきか、決断を迫られているのではないでしょうか。
確かに防衛費、防衛力の増強は必須です。
しかしそれを「増税で達成しよう」などという、財務官僚の手の平で踊っているような愚策で行う事だけは間違っていると言えます。
PS:
サマーズ氏の説く戦時の内閣をイメージするにあたってはベン・ホロウィッツ著『HARD THINGS』で描かれている「戦時のCEO」が参考になりました。
書評『駆けぬけて、テッサ!』 主人公の“危ういほどの一途さ”。 「BLIND」に込められた意味を考えさせられる。
主人公の“危ういほどの一途さ”。 「BLIND」に込められた意味を考えさせられる。
『駆けぬけて、テッサ!』山内智恵子訳 感想
普段は、読む本と言えば大抵は政治学、社会学、ビジネス書、経営、戦略、歴史、自己啓発本等々のいわゆる実用書ばかりで、小説のたぐいのようなものはまるっきり読んだことは無いのですが、偶然、「本が好き!」で、本書のレビューを目にし、(http://bit.ly/2cBoTNn)、また本書の翻訳者である山内智恵子さんが翻訳された児童絵本「ふしぎなトイレくん」http://amzn.to/2oFlhUl
を以前に読んだこともあったことから、不思議な縁を感じ、思い切って読んでみました。
■主人公の“危ういほどの一途さ”
本書で一番、強烈な印象を与えるのは何を隠そう主人公の“テッサ”ではないでしょうか。
その“一途な性格”は時に“狂気じみている”印象すら与えます。
その一途さが“負の要素”から発せられた場合は“狂気”、“正の要素”から発せられた場合には“目もくらむような美しさ”を発するような、何とも形容しがたい”危うさ”を内包しているように思えてなりません。
それがそのまま、素行不良というレッテルを張られ、悪い方に向かっていたら主人公はただの”危ない不良少女”になっていたのかもしれませんが、主人公が持ち合わせている“眩いばかりの光”という“資質”に気付いた周囲の大人たち、或いは仲間によって、主人公は人間的に大きく成長していきます。(むしろ主人公の資質に気付くのが最も“遅い(あるいは気づかないまま)なのが両親)
■「BLIND」に込められた意味
原題「BLIND BEAUTY」は素直に訳すと「盲目の美」という意味になるそうですが、「BLIND」という単語には「盲人、見る目がない、気が付かない、盲目的、行き当たりばったり」という意味もあるそうです。
本書では「目の不自由な存在」として、主人公が最も大切にしている「親子二代の愛馬」が登場しますが、子供の資質に対して最も“目の不自由な存在”、“無理解”な存在として、両親は描かれているように思います。
「本書で描いた親は子供に対して無理解な存在でしたが、この本を読んでいるあなた自身はどうですか?」と作者から問われているような気になってしまいました。
そういう意味においては「親のための児童書」ということもできるのではないでしょうか。
本作のストーリーに感動しつつも、色々と考えさせられることが多かったです。
改めて良い本に出会えてよかったと思いました。