『日本国憲法を改正できない8つの理由』書評 憲法改正論議とダメ虎~~なぜ日本国憲法を改正できないのか。~~ #倉山満 

日本国憲法を改正できない8つの理由』のレビュー

(Scorpionsさんの書評)

【本が好き!】 

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憲法改正論議とダメ虎

~~なぜ日本国憲法を改正できないのか。~~ 

答:改憲派護憲派も「言葉遊び」に終始して、じゃれ合っているから。

 

■なぜ日本国憲法を改正できないのか

なぜ日本国憲法を改正できないのか-。
答えは「キュー〇ー3分クッキング」並みにカンタンです。
 
改憲派護憲派も「言葉遊び」に終始してじゃれ合っているからです。
 
だって、誤植の一文字すら変えられないのですから。(憲法第7条4号)
 
これを「言葉遊び」、「じゃれ合っている」と言わずして何というのでしょうか?
  
著者は35万部を超えるベストセラー『嘘だらけシリーズ』でおなじみの倉山満先生。
倉山先生の著書は『嘘だらけ』シリーズをはじめ、『保守の心得』、『政争家・三木武夫』、『歴史問題は解決しない』、『太平記の時代』、『増税と政局』、『帝国憲法物語』などなど数えきれないくらい読ませて頂いてきました。
 
「誰でも坂本龍馬になれる」
「微力は無力ではない」
「どうなるか?ではなく、どうするか!を考えよ。」

 
などの倉山先生の言葉は実生活においても活かすことができる大事な心構えを教えてくれるものだと思います。
 
本書『日本国憲法を改正できない8つの理由』は平成25年に出版された『間違いだらけの憲法改正論議』を文庫化したものですが、平成25年当時の議論の様子とそれから4年近く経過した現在とを見比べても「一ミリも状況が変わっていない」という現実に驚かされます。
 
■まるで暗黒時代の阪神タイガース
今回護憲派改憲派憲法論議を俯瞰してみて改めて感じたことは、「まるで90年代の、暗黒時代の阪神タイガースを見ているかのようだなぁ」というものでした。
 
阪神タイガースといえば、巨人に次ぐ人気球団であり、2005年以降優勝から遠ざかっているものの、近年はAクラスで安定推移しています。
ですが、90年代のタイガースといえば、ファンの間でも「暗黒時代」と言われているとおり、万年Bクラスどころか、常に最下位、運が良くて5位という、それはそれは悲惨な成績でした。
 
本来、「リーグ優勝」「日本一」を目指して戦うスポーツチームであるはずなのですから、ファンを含め選手や監督、現場スタッフ、それを支える球団フロント陣、全員が一丸となって「勝利」を目指すのが当然のはず。
ですが、皮肉なことに巨人に次ぐ観客動員数を誇る人気球団であり、「何もしなくても黒字になる」ことが悲劇の始まりでした。
 
■「ダメ虎でも黒字だから良い」 惰眠を貪る球団フロント・事務局=護憲派・財務官僚
当時、まことしやかに噂されていたのは「球団フロント陣は”優勝したい”なんて考えていない。むしろ”優勝しないでくれ”と考えている」というものでした。
 
なぜか-。
「優勝してしまうと優勝に見合った分だけ選手の年俸を上げなくてはならない。それでは収益が圧迫され、球団経営にとってはマイナスなのだ。優勝しない程度にそこそこの成績でいい。」というのです。
 
前述したように全員が一丸となって取り組まねば「勝利」などおぼつかないはずなのに、フロント陣にはそのような考え方が蔓延していました。
ライバル球団がどれだけほくそ笑んだことか目に浮かぶようです。
 
これって、今の護憲派あるいは財務官僚の考え方そのものではないでしょうか?
 
本来、コスト(選手の年俸)が上がるというのであれば、売上を伸ばすあるいは利益率を改善させるなどの「企業努力」をしなければなりません。そのため取り組むべきことは評価制度の見直し、スカウト活動の強化、業務の効率化、グッズ販売の強化、ファンサービスの強化等々、山のようにあります。
 
ですが、「暗黒時代」の阪神フロント陣がこれらの企業努力に取り組んでいるという話は聞いた記憶がありませんでした。
 
これを今の憲法論議に置き換えると、今まで企業努力を怠ってきたことが白日の下に晒されたくない経営陣が護憲派、そして選手や安全対策を「コスト」としかみなさず、年俸を引き下げること、安全コスト、メンテナンスコストをいかに抑制するかということばかりを考えている事務局が「財務官僚」といえます。
 
■ガナリ立てるだけのトラキチ改憲派
一方、タイガース愛を語るトラキチも悲惨でした。
借金が30あっても「30連勝すれば借金0や!」
連敗してても「10-0から5点差まで詰め寄った。5点取れる実力があるのだから、次に繋がる負けや!」
等々、目の前の出来事に一喜一憂する有り様でした。
 
私自身も熱心なタイガースファンだったので、開幕直前には、自分が監督になったつもりで開幕ベストオーダーを考え妄想したものです。
当時は新庄、亀山が中心選手で、妄想の中では彼ら以下、野手は全員3割、30本で投手は20勝が1人、10勝以上が5人以上と、年間100勝以上する計算になってましたがw
  
今の憲法論議に当てはめれば、3年連続最下位でロクに補強もしていないのに、監督が「今年は最下位脱出を目標にします」と言おうものなら。「なぜ『優勝』を目標にしないのか!」と憤慨しているトラキチ改憲派だと言えるのではないでしょうか。
  
■目指すべきはチームが強くなること
目標に『優勝』の二文字が入っていれば、優勝できるならこれほど簡単なことはありません。
本当に優勝して欲しいのであれば、「現実にチームが強くなること」、これ以外に選択肢は無いないはずです。
 
今思えば、阪神タイガースの暗黒時代も、90年代当時のまだまだプロ野球一強だった時代に、下部リーグが存在しないこと、すなわち「降格」というものがなく、最低でも6位でいることができたからこそ許されていた「甘えの構造」だったとも言えます。
 
もし当時のプロ野球JリーグのようなJ2との入れ替え制が取られていたのだとしたら、「阪神タイガース」の名は”過去に1部リーグに在籍していた元・強豪チーム”となって本当に歴史の彼方に消えていたかもしれません。
現にJリーグではそのような状態になってしまった名門チームがいくつも存在しています。
 
おそらくこれらのサッカークラブの中に「ダメ虎」だったチームというのは殆ど無いのではないでしょうか。どのチームも必死にJ1生き残りをかけてチームを強くさせようと企業努力し、全員が一丸となって戦っていたはずです。
 
それでも「降格」してしまうのです。
一度J2に降格したチームがJ1に昇格するのがどれほど至難の道なのか、枚挙にいとまはありません。 
  
「過去に1部リーグに在籍していた元・強豪チームになってしまうこと」、「2部に降格してしまうこと」を国で捉えたならば、「滅亡する」ということになるのではないでしょうか。
  
■半島有事の今だからこそ必要な、アベノミクスの再起動、消費税減税、異次元緩和
いままさに北朝鮮の核開発に端を発する「半島有事」が日に日に現実味を帯びてきており、緊迫してきています。
上述のたとえになぞらえるならば、ロクな補強も進まないうちに、開幕戦を迎えてしまったに等しいと言えます。
 
少なくとも万全の体制で開幕を迎えたと思っている人は少数派でしょう。
本来であれば、現在のような事態になることは十分予想されていたわけですから、もっと国民の生命・財産を守るための安全対策に力を入れておくべきだった面は否めません。 
強いチームを作るためにはそれなりの時間が必要であるのと同様に、防衛力の増強も一朝一夕にできるものではありません。少なくとも数年単位の時間をかけて実施しなければならないものであることは自明です。
  
そんな状況下にあって、私たち日本というチームの一番の強みといえば、何でしょうか?
 
それは「経済力」です。
 
倉山満先生の別書『保守の心得』によれば、平成14年、小泉首相だけが拉致被害者を連れ帰ることができたのはなぜか。それは「景気が回復していたから」。これに尽きるというのです。
  

日本のような経済大国の景気が回復すれば潜在的な軍事力は拡大し、それだけで外交交渉の余地が広がります。
(略)
端的にいえば、北朝鮮は日本と戦争になれば滅ぼされると怯えたわけです。
北朝鮮は力の論理の信奉者です。自分より弱い相手は歯牙にもかけません。反対に、自分より強い相手とは絶対にケンカをしないのです。だから怯えたのです。
そこに日本が交渉する余地があったのです。


と『保守の心得』では指摘されています。
 
今となっては、平成14年と状況も違いますし、情勢の緊迫度も『保守の心得』が出版された2014年の頃と比較にならないほど高まっていることは確かです。
ですが、「経済成長こそが潜在的な軍事力の増強」という本質に変わりはないはずです。
 
現実の防衛力の増強が間に合っていない現状を鑑みた場合、最も短期間に、最も効果的な防衛力の増強とは「お金を刷って刷って刷りまくって、加熱しすぎるぐらい経済成長させること」に他ならないのではないでしょうか。
 
ならば、取るべき選択とは景気、経済成長にマイナスの効果しかもたらさない消費税を減税し、黒田バズーカを再びうち放つこと、即ちアベノミクスを再起動させること」に尽きるのではないでしょうか。
 
最も短期間に最も高い効果を生み出し得る「アベノミクスの再起動」ですら、今ここに至っては遅きに失しているのかもしれません。ですが、「滅亡」という名の降格危機から逃れるためには手段を選んでる暇などないはずです。

■「滅亡」という名の降格危機から逃れるために
日本が「ダメ虎」であっても許された時代はとうの昔に過ぎ去りました。
そういった現在にあって、必要な議論とは言葉遊びでじゃれ合うことではありません。
  
ましてや「観客動員数は増えない(=経済成長はしない)」と決めつけ、「観客動員数が減って収益が減少するから、選手の年棒を抑えよう、安全対策(=防衛費)は雀の泪ほどにしよう、それでも自分たちの給料(=天下り)は増やしたいから、チケット価格を吊り上げて(=増税)、収支を維持しよう(=健全財政)」などということではないはずです
 
「滅亡」という名の降格危機から逃れるためにあらゆる手段を講じること。
このための議論こそが求められているのではないでしょうか。
 
茨の時代に突入した「いま」だからこそ、憲法とは何か、憲法を論ずるとは何か、その本質を知らなければならないと改めて痛感させられました。
 
おススメです。

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