国家において、国民法に従う国民は、たとひ国民法を尊重することによって、彼にとって有利なあるものを捨てなければならないことがあっても、彼は愚かではない。
同様に人民が諸人民に共通の法を無視するといふところまで、自己に有利なるものを重要視しなくとも愚かではない。
二つの場合の理由は同じである。
何故ならば、当面の利益のため、国民法を侵犯する国民は、彼自身及び彼の子孫の恒久的な利益を確保するものを破壊する如く、もろもろの自然法及びもろもろの万民法を侵犯する人民は、将来における事故の平和の堡塁をも除去するからである。
一又正雄訳『戦争と平和の法 第一巻』(1989年、酒井書店)