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書評『日本は誰と戦ったのか』 江崎道朗著 KKベストセラーズ

 

インテリジェンス・ヒストリーから始めよう! スターリン工作史観が語る、中国が仕掛ける「新しい戦争」インテリジェンス~

 

■作品紹介

インターネット番組『チャンネルくらら』や月刊『正論』での連載でお馴染み、現在の保守論壇を牽引するインテリジェンス・安全保障のスペシャリスト、江崎道朗先生による、アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄』、『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』の続編であり、対を成すともいえる一冊。  

アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄』では『ヴェノナ文書』の公開により、アメリカの保守派を中心に、第二次世界大戦の責任はF・ルーズヴェルト民主党政権と、その背後で日米戦争を仕掛けようとしていた共産主義組織(コミンテルン)にあるのではないか」という問題意識が浮上しており、その中には「日本の軍国主義者が世界征服を目論み、大東亜戦争を引き起こした」とする東京裁判史観の見直しも含まれていることを、

  

そして『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』においては、ルーズヴェルト政権がそうであったように、日本においても政府の自滅(経済失策、労働問題・貧困問題への無理解、右翼全体主義者らによる無用な言論弾圧)を利用する形で、ゾルゲをはじめとするコミンテルン、反皇室の左翼リベラルによって内部穿孔工作が張り巡らされていたこと、これらが日本を戦争に突き進ませる大きな要因となっていたことを明らかにしました。

  

これに対して本書『日本は誰と戦ったのか』は、『ヴェノナ』以降さらに踏み込んだ研究がなされているアメリカでの最新歴史研究、その最たるものともいえるM・スタントン・エヴァンズ著スターリンの秘密工作員を中心に、「F・ルーズヴェルト政権内中枢がコミンテルンの秘密工作によって、いかに操られていたのか」を見事なまでに暴ききっています。

■ヴェノナを超える衝撃

~『スターリンの秘密工作員』~『ヴェノナ』および『裏切られた自由』との対比から~

本書において中心的に取り上げられているM・スタントン・エヴァンズ著『スターリンの秘密工作』(未邦訳)は、まさに“ヴェノナを超える衝撃”ともいうべき内容を含んでいると言えます。

なぜか。

アメリカ国内におけるソ連スパイの存在を白日の下に晒した『ヴェノナ』。その歴史的価値は決して色褪せるものではありませんが、ヴェノナの描き出すソ連スパイたちの行動様式というのは、

「アメリカ政府内のソ連スパイがもたらす報告や盗み出した文書のコピーなどの大半は、ソ連諜報部のクーリエの手によってソ連に運ばれていたのである」(『ヴェノナ』第11章「ソ連の諜報活動とアメリカの歴史(結論)」より)

という一文や、原爆スパイたちの存在に代表されるように、得てして「アメリカから機密情報を盗み出したスパイ」という視点で語られがちです。

 

また大著『裏切られた自由』も(下巻は未読ですが)ハーバード・フーヴァー大統領自身が、文中で「歴史は、ルーズヴェルト氏の政治家としての資質を問い続けるに違いにない。」と述べているように、ソ連スパイやその協力者たちのアメリカ政府の外交に対する負の影響を考慮しつつも、どちらかというと「フランクリン・ルーズヴェルト本人が戦争を望んでいた」という視点で描かれている印象を受けます。

(駐英大使ジョセフ・P・ケネディ「本省からチェンバレンの背中を押せ」との指示があったことを明らかにしたというエピソードもその最たる一例といえます。)

これらに対して、スターリンの秘密工作員は、また別の視点を私たち読者に提供してくれています。それは、

「米国政府内に潜り込んだソ連スパイは機密情報を盗み出すだけでなく、情報を意図的に操作すること、さらにはルーズヴェルト大統領の健康不安に付け込むことによって、政策決定そのものについてすら、”決定的な影響力”を行使していたのではないか」

という視点です。 

東京裁判史観からスターリン工作史観へ

江崎道朗先生は上記歴史観の変遷を次のように分かりやすく整理してくれています。すなわち

①「(日米開戦は)日本軍による卑劣なだまし討ち」つまり「日本が悪かった説」

ルーズヴェルト民主党大統領が第二次世界大戦に参加するため、日本の機密暗号を傍受して日本軍の攻撃を知っていたのに、知らないふりをしたとするルーズヴェルトにも責任がある」説

③日米戦争に至る経緯に関する歴史研究が進んだことによる「日米両国はともに国益を追求した結果、戦争になった」説

④「ソ連スターリンが秘密工作員を使って日米和平交渉を妨害し、日米両国の対立を煽り、日米戦争へと誘導した」とするスターリン工作史観」

へと、歴史認識は変わってきているということです。 

特にスターリン工作史観」はアメリカの保守派、反共派、軍事専門家を中心に、ルーズヴェルト民主党政権と中国、ソ連、日本との関係を見直そうとする動きの中で論じられている歴史観なのだそうです。 

これら米国での歴史見直しを踏まえ、日本も「東京裁判史観」から脱却すべきであり、コミンテルンの秘密工作も踏まえたスターリン工作史観」へ転じるべきだと江崎先生は論じます。 

■なぜ今、米国保守、軍事専門家の間で「スターリン工作史観」が論じられているのか

東京裁判史観からスターリン工作史観へ転換すべきだ-。

只でさえ“コミンテルン”と書くと、いわゆる陰謀論の一種だと脊髄反射する人も多いようなので、この「スターリン工作史観」を唱えると、十把一絡げにその類のものだと決めつける人もいるかもしれません。 

ですが、むしろここで問うべきことは「なぜ今、米国保守派、軍事専門家の間でスターリン工作史観が論じられているのか」ということではないでしょうか。 

本書でも『スターリンの秘密工作員』に関する興味深いエピソードとして次のようなことが描かれています。

米軍の情報将校だった一人のアメリカ人が私のところに連絡してきました。彼は、アメリカにおけるいわゆる従軍慰安婦問題に関する反日宣伝の背後に、中国共産党北朝鮮の対米工作があると考え、その調査のために日本にやってきたのです。 

中国共産党の対米宣伝工作について調べている彼といろいろ話をしていたら、アメリカの保守派による日米戦争の見直しの動向が話題になりました。 

彼は「中国の軍事的台頭の背景には、第二次世界大戦当時の、ルーズヴェルト民主党政権外交政策の失敗があると考え、アメリカの保守派、反共派、軍事専門家の間で、ルーズヴェルト民主党政権と中国、ソ連、日本との関係を見直そうとする動きが活発になってきている。」として、いくつかの本を紹介してくれました。 

そのひとつがなんと『スターリンの秘密工作員』だったのです。

 このエピソードの中で注目すべきは、米国情報将校の視点でしょう。

それは、現在の中国の軍事的台頭と、第二次世界大戦当時のルーズヴェルト民主党政権外交政策すなわち日米戦争へと突き進んだことを関連付けて分析しているという点です。

■中国が仕掛ける「新しい戦争」

~心理戦、メディア戦、法律戦の”三戦”~

この米国情報将校の視点はどこからきているのか-。

日本が好きで、日本によく思われたいから「日本が正しかった」と主張しているのでしょうか?おそらく違うでしょう。

では、米軍情報将校らの視点はどこから由来するのか。

それを紐解く鍵はピーター・ナヴァロ著の『米中もし戦わば』に求めることが出来そうです。  

『米中もし戦わば』では、21世紀において中国がその領土的野望を前進させるのに効果を発揮したものとして、従来のキネティック(殺傷兵器)的な軍事力を行使する戦争ではなく、ノンキネティック(非殺傷兵器)な“新しいタイプの戦争”、すなわち「三戦(心理戦、メディア戦、法律戦)」の存在を挙げています。 

  1. 心理戦…相手国とその一般国民を脅したり混乱させたり、あるいはその他方法でショックを与え、反撃の意思をくじくこと。
  2. メディア戦…国内外の世論を誘導し、欺されやすいメディア視聴者に中国側のストーリーを受け入れさせること。ケンブリッジ大学の元・ホワイトハウス顧問のステファン・ハルパー教授曰く「現代の戦争を制するのは最高の兵器ではなく、最高のストーリーなのだ」 
  3. 法律戦…現行の法的枠組みの中で国際秩序のルールを中国の都合のいいように曲げる、あるいは書き換えること。
現代における三戦の利点は、以前ならキネティックな手段によってしか実現できなかった目標を達成するための、新しい手段を提供しているという点である。さらに、三戦は互いに結びついて非常に高い相乗効果を生み出す。
曖昧な歴史に基づいて不当に領有権を主張する。(法律戦)
 次に、問題の海域に民間船を大量に送り込んだり、経済的にボイコットするなど、あらゆる形態のノンキネティックな戦力を展開する。(心理戦)
そして、最後に「中国は、屈辱の100年間に列強の帝国主義に踏みにじられた。平和を愛する中国は、歴史的な不正行為を正そうとしているだけなのだ」というストーリーを広め、国際世論をコントロールしようとする(メディア戦) 以前なら軍事力の行使によってしか達成できなかった、領土拡大、現状変更という目標の達成を、三戦は明らかに目指している。

中国の行動をこのように解釈することが本当に正しいとすれば、われわれが取り組んでいる「米中戦争は起きるか」という問題にある意味はっきりとした答えが出たことになる。

つまり、中国はアメリカとその同盟諸国を相手に、ノンキネティックな新しい戦場ですでに戦っている。中国のサイバー戦士たちが宣戦布告なしの戦争をサイバー空間で遂行しているのとまったく同じように。

この現実を考えれば、ペンタゴンやアジア各国の防衛省はその任務権限を拡大し、三戦に対抗する戦略を取るべきだろう。今からでは遅すぎるかもしれないかもしれないが。
byピーター・ナヴァロ著『米中もし戦わば』より 

つまり、“現代の戦争”とは、なにものにも増して「情報戦」の様相を呈しているということであり、歴史戦も現代の戦争の一部なのです。

にもかかわらず、日本国内においては、対外インテリジェンス機関の創設は思ったほど進展しておらず、インテリジェンスの専門家が不足しているというのが現状のようです。 

そして、インテリジェンスの専門家が増えない背景には、インテリジェンスの基礎、つまり「インテリジェンス・ヒストリー」という学問が日本では十分に確立していないという側面が多分に関係していると江崎先生は考えており、だからこそ、本書においてアメリカ国内での最新歴史研究であるスターリン工作史観の内容をこれでもかというくらい丹念に紹介しているのです。 

■インテリジェンス・ヒストリーの重要性 北方領土問題の発端はヤルタ会談にあり!?

~アジアの権益を売り渡した工作員たち~

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インテリジェンス・ヒストリーの重要性がわかるエピソードをひとつご紹介させて頂きたいと思います。 

我が国の外務省のHPでの説明によれば、北方領土問題は、「ソ連による日ソ中立条約に反して、ソ連が対日参戦し、ポツダム宣言受諾後の1945年8月28日から9月5日までの間に北方四島のすべてを不法に占領したことに端を発している」とされています。  

しかし事実はそうではなく、遡ること半年前の1945年2月11日に米・英・ソで署名された「ヤルタ会議文書-ソ連の対日参戦に関する協定」こそが、ソ連の対日参戦と引き換えにアジアの莫大な領土と権益をソ連に与えるという内容であり、かつ、上記ソ連の軍事行動を是認する根拠となっていたことが本書では明らかになっています。 

しかも、このヤルタ協定は、その内容を詰めて協議していた当時から、「そもそもソ連に対日参戦を要請する必要はない」、「仮にソ連に対日参戦してもらうにしても、これほどの権益を与える必要はない」という意見が米国政府内や軍部内からは多く寄せられていました。 

にも拘わらず、それらの意見は無視され、ほぼソ連の意向に沿うような形での協定が結ばれたのだというのです。 

なぜか。

ヤルタ会談を仕切っていた中心的存在の米国政府職員がコミンテルンのスパイ、スターリンの秘密工作員であるアルジャー・ヒスだったからです。

アルジャー・ヒスは国務省からのレポートや米軍関係者の意見を握りつぶし、ソ連に有利となる情報しかルーズヴェルト大統領らに挙げていなかったのです。 

その結果、どうなったか。

日本から見れば、日露戦争後のポーツマス条約で正当に獲得した南樺太の領土や満洲の権益を「背信的攻撃で奪った」という言いがかりで奪われ、千島列島も奪われることになりました。 

アメリカ国民にとっても同様です。ヤルタ密約はアメリカの国益を大きく損なうものであり、戦略的に重要な南樺太と千島列島をソ連に抑えられるだけでなく、満洲を実質的に支配されたことで中国大陸の共産化が進み、現在に至るまで冷戦に苦しむことになりました。 

これはほんの一例に過ぎませんが、「日米が互いに血を流して戦った戦争とは一体何だったのか」と思わずにはいられません。まさしく、ソ連コミンテルンにいい様にしてやられた」と言わざるを得ないのではないでしょうか。 

こういった秘密工作、裏工作の歴史(インテリジェンス・ヒストリー)を知らずして、的確な情勢分析などできるはずもありませんし、「どうやって北方領土を取り返すのか」という「知恵」が湧き出るはずもないのは自明なのではないでしょうか。 

■『インテリジェンスを一匙』から読み解くインテリジェンスのススメ

長年、東京裁判史観が染みついてしまい、インテリジェンス・ヒストリーを学ぶ機会すら失い、インテリジェンスの基盤が大きく揺らいでいる我が国においては、専門家を育成しようにもそれ相応の時間も手間もかかるであろうこと、育成のみならず専門家を活かす組織づくりにおいてすらも、その道のりは遠く険しいものであることは想像に難くありません。

では、私たちは、中・ソの仕掛ける情報戦に一方的に打ちのめされるしかないのでしょうか?

ただ手をこまねいていることしかできないのでしょうか?  

「否。そうではなく、私たち一人一人ができることがあるのだ」ということを教えてくれる一冊があります。

警視庁公安部長、警察大学校長を歴任した元内閣情報調査室長の大森義夫氏の著著『インテリジェンスを一匙』です。

 

“インテリジェンス初心者向け”に平易な文章でわかりやすく、けれども実経験に基づくインテリジェンスの在り方が書かれており、「学問のススメ」ならぬ「インテリジェンスのススメ」といった趣です。 

その内容を若干の編集も加えてスローガン的に書き出してみると次のようなものになります。

  1. 負け戦から教訓を学ぼう。負け戦から教訓を学び、勝ち戦で自信をつけることによって組織は強くなる。 
  2. 無知でお人好しな国家をやめることから始めよう。「平和国家だから他国の情報を採ったりしない」という幼稚な議論はあるが、最低限デマ情報を検証、反芻する程度のインテリジェンスがあってどこが悪いだろう。平和国家とは無知でお人好しな国家のことではない。 
  3. 日本のインテリジェンス再建は、100%防衛的なカウンター・インテリジェンス組織の構築から始めよう防衛戦を重ねているうちに米国はじめ攻撃的インテリジェンスにたけた国々が世界レベルとはどんなものか教えてくれるに違いない。 
  4. 与件を疑うことから始めよう。「与えられた条件の下で解を求めよ」というのは受験勉強だけであり、現実はまず与えられた条件を疑うことから始まる。
  5. 正直に、しかし狡知に身構えよう。情報の世界では平時も戦時もない。北朝鮮もアルカーイダさえも衛星によって見られていることを、聞かれていることを前提に行動している。デコイ(おとり)を置いたりフェイク(欺罔)情報を発信したりは、日常茶飯事である。正直に、しかし狡知に身構えなくては情報戦に敗れる。
  6. プロになろう。国際政治の理論をいくら聴講してもプロにはなれない。先輩の技を真似ることである。終戦時の大本営情報参謀だった堀栄三は、戦後ニューヨークの株式市況を毎日開いているうちに、薬品会社と缶詰会社の株が上がると米軍の攻勢があることを発見した。公然の事実から法則性あるいは発展性を探りだすのが優れた情報マンの技である。
  7. 上兵伐謀を旨としよう。つまり一番よい対策は企ての段階で犯行の意図を挫折せしめることだ。これは公安三課の方針でもある。
  8. 観察力と知恵を鍛えよう。現代の情報戦は知のオリンピックでもある。必要なのは腕力ではない。観察力と知恵だ。世俗の雑知識(ナレッジ)を超えて、右脳を生かし、感性の光る思考をしようではないか。
  9. 誠実さと分別を、思いやりと決断力を兼ね備えた人物になろう。インテリジェンスは騙されたり、騙したりのビジネスだ。それだからこそ人を裏切らない誠実さが第一である。本物のインテリジェンスか偽物かの識別は極めて明白である。基準はただ一つ、訓練されている(well-trained)かどうかである。心身を、そして能力と行動様式を正規に鍛えていない者をインテリジェンスとは呼ばない。
  10. 日本としての情報を持とう独自の情報を持てば、独自の政策を持てる。 

 ■インテリジェンス・ヒストリーをもう一匙 

この「インテリジェンスのススメ」に次の項目を追加してみてはどうでしょうか。

11.インテリジェンス・ヒストリーから始めよう。すべての出来事には歴史の流れがある。物事には、まず過去というものがあり、そのために発生し、そこに至るまでの流れや行為、そしてその成り行きというものが将来に残っていくものだ。

歴史を学び、インテリジェンスの基盤を、足腰を鍛えよう。プロセスを知らずに始める交渉ほど愚かなことはない。 

文章の元ネタはエドワード・ルトワックと並び称される世界三大戦略家の一人、コリン・グレイ氏から拝借しました。

全ての戦争には「歴史」のコンテクストがある。

戦争にはまず過去というものがあり、そのために発生し、そこに至るまでの流れや行為、そしてその成り行きというものが将来に残っていくものなのだ。

Byコリン・グレイ著『戦略の格言』

 

 

創作ネタではありますが、それほど的外れではないと個人的には思っています苦笑

江崎先生も本文中で

本書を読んで「やはりルーズヴェルト大統領とスターリンが悪かったんだ。日本は悪くなかったんだ」というような誤読はしないで頂きたいということです。

国際政治の世界ではだまされた方が悪いのです。

そして先の大戦では日本はインテリジェンスの戦いで敗北したのです。

インテリジェンスの戦いで対抗するということは、中国などを敵視することではありません。敵視するのではなく、中国やロシア、北朝鮮の動向を懸命に調査し、分析し、できるだけ正確に理解しようとすることです。

本書でいえば、スターリンの秘密工作員がどのような戦略でどのような秘密工作を仕掛けたのか、膨大な資料と格闘しながら調査し、分析し、工作内容を正確に理解しようとすることが重要なのです。

 と語っておられます。

現にクラウゼヴィッツの「正しい読み方」』やエドワード・ルトワックの戦略論』『現代の戦略』などを読むにつけ、欧米諸国においては、未だに近代軍事戦略論のケーススタディ第一次世界大戦を中心に考えられているようです。

 

第二次世界大戦なんぞ所詮、第一次世界大戦の延長に過ぎない」と言う程度の認識であることを考えれば、米軍関係者が第二次世界大戦を『スターリン工作史観』でもって痛苦な反省のもと、分析しようとしているのであれば、それは驚くべき転換とみるべきではないでしょうか。

(大体において第二次世界大戦に関する事柄といえば、ドイツの電撃戦か、核戦略のどちらかぐらいだった気がします。)

それだけ、米軍関係者も“必死”にインテリジェンス・ヒストリーを学んでいるのだということです。  

インテリジェンスの必要性とともに、その基盤としてのインテリジェンス・ヒストリーの重要性を教えてくれる一冊です。 

おススメです!!